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第三者委員会等報告書まとめ No.3 中部水産株式会社

第三者委員会

会社・委員会報告書の概要

■1 対象会社
中部水産株式会社(以下「中部水産」)

■2 日付
・委員会設置日:2024年2月9日
・報告書提出日:2024年4月8日

■3 市場・会計監査人(監査法人)
・上場市場:名証メイン
・会計監査人:太陽有限責任監査法人

■4 委員会・委員・補助者
・「特別調査委員会」
日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」への準拠なし

・委員
委員長:小川 薫(公認会計士)
委員:向井 小百合(弁護士)
委員:成瀬 玲(弁護士、中部水産社外監査役)

・補助者
公認会計士4名、弁護士1名

報告書のサマリ

■1 不正の内容
 中部水産の特定の取引に関して、循環取引や架空取引の疑いが生じた。A社から仕入れ、中部水産がB社へ販売し、B社がA社へ販売するという循環取引があったことが明らかとなった。また、同様にG社を起点とする同様の循環取引も、委員会による件外調査により発覚した。調査の結果、同社の営業担当者、取締役は、循環取引であるとの認識を有していなかった、との判断となった。

■2 不正の原因
 不正の原因は、会社内の牽制機能が不十分であった(特定の魚種を長期に担当するという業務の性質上、担当者のローテーションがない)こと、取引先とのコミュニケーション不足、不適切取引についての報告が徹底されていないこと、等が挙げられている。循環取引や架空取引のリスクを適切に認識し、組織的に牽制機能を強化する必要があったとされた。

■3 会計処理への影響額
 2016年3月期から2024年3月期について、修正が行われた。以下に一部を記載する。
・2022年3月期:売上高▲675百万円、営業利益▲9百万円
・2023年3月期:売上高▲1,040百万円、営業利益▲10百万円

■4 再発防止策
①社員教育の徹底
②リスク評価プロセスの構築
③組織的な業務運営の徹底
④社内システム整備と牽制体制の充実化
⑤在庫リスクの適切な評価とその対応
⑥取引関係書類の保存期間の設定

■5 その他
 本報告書の特徴として、会計監査において、なぜ本件の循環取引が発見されなかったかについて、委員会の意見の記載がある。監査法人は、いわゆる不正リスク対応の対象を「継続的に粗利率の低い取引」としていたところ、本件のA社、G社との取引は「継続的に粗利率が低い取引」ではなかったため、発見されなかった、とのことである。

その後の経緯

■1 役員の辞任等
 特別調査委員会の報告を受け、代表取締役社長が月額報酬の30%を6ヶ月、営業部門を統括する専務取締役が月額報酬の30%を4か月、役員報酬の自主返上をしました。また、関与した従業員について、就業規則に則り処分することを公表しました。

■2 会計監査人の異動
 特になし。

■3 その他
 2024年3月期について、2024年6月25日付で東海財務局に提出した2024年3月期の内部統制報告書において、開示すべき重要な不備があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨記載している。

資料へのリンク等

■会社IR

特別調査委員会の調査報告書公表に関するお知らせ

役員報酬の自主返上等に関するお知らせ

財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ

■日経記事

中部水産、過去の有報を訂正 取引先の架空取引で

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