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第三者委員会等報告書まとめ No.4 スターゼン株式会社

第三者委員会

会社・委員会報告書の概要

■1 対象会社
スターゼン株式会社(以下「S社」)

■2 日付
・委員会設置日:2023年11月8日
・報告書提出日:2024年1月15日

■3 市場・会計監査人(監査法人)
・上場市場:東証プライム
・会計監査人:EY新日本有限責任監査法人

■4 委員会・委員・補助者
・「特別調査委員会」
日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」への準拠なし

・委員
委員長:和田 衛(弁護士)
委員:滝 琢磨(弁護士)
委員:本多 守(公認会計士)

・補助者
弁護士や会計士を含む50名の専門家

報告書のサマリ


■1 不正の内容
 S社の特定の営業拠点で発覚した不正は、主に架空取引や循環取引によるものであった。架空取引では、仕入取引先企業との間で実態のない取引を行い、売上や仕入を偽って計上する手法が取られていた。具体的には、A氏が担当していた取引先である甲社や乙社と連携し、商品が存在しないにもかかわらず、S社が架空の商品を仕入れたとする取引の外観を作出した。甲社がS社に商品を「販売」し、その後S社が乙社に「販売」するという架空の商流等、合計4つの不正な商流が認定された。

 さらに、乙社が甲社に支払った金額に対しては、10%の上乗せをした金額で請求するスキームも存在し、架空取引が組織的に拡大されていた。このような不正行為により、実際には商品の受け渡しが行われていないにもかかわらず、会計上は売上が計上されていたため、虚偽の財務報告が行われる結果となった。

■2 不正の原因
 社内の牽制機能が十分に機能していなかったこと、長期間人事異動がなく同一業務に従事することで監視が甘くなり、不正取引が見過ごされていた。また、内部監査の不備や、上長の監督不足も原因とされる。上長は、不自然な売上高、利益率の低下、及び在庫残高の増加等について確認を怠っていた。

■3 会計処理への影響額
 2018年以降の循環取引が財務諸表に影響を与え、複数年度にわたる修正が必要とされた。影響額は限定的である。影響額の抜粋は以下のとおり。

 2021年3月期 売上高▲106百万円、売上総利益▲7百万円
 2022年3月期 売上高▲68百万円、売上総利益▲29百万円
 2023年3月期 売上高▲157百万円、売上総利益▲118百万円

■4 再発防止策
①人事施策の見直し
②コンプライアンス意識の強化
③コンプライアンス体制を強化するための組織・体制・ルールの見直しなど
④経理のチェック機能の強化及び経理システムの改善を含む内部統制の強化
⑤在庫管理・棚卸の強化

■5 その他
 2018年に発生した複数の不祥事を受けて、S社はジョブローテーション等の導入をしていたにも関わらず、当該担当者は同じ会社に関与し続けていた、という経緯があり、過去の不祥事対応が甘かったといえる。

その後の経緯

その後の経緯
■1 役員の辞任等
 2024年2月1日付で、以下の機構改組を実施した。
・コンプライアンス推進部を新設し、社長直轄とする。
・管理本部に法務部を新設する。
・経営本部にリスク管理部を新設する。
・営業本部傘下の業務管理部を、財務経理本部に移管する

■2 会計監査人の異動
なし

■3 その他
2024年1月、2019年3月期から2023年3月期の内部統制報告書に、開示すべき重要な不備があったとして、関東財務局に訂正内部統制報告書を提出した。

資料へのリンク等

■会社IR

特別調査委員会の調査結果報告書受領に関するお知らせ

財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ

■日経記事

スターゼン、不適切取引で売上高5億円のマイナス影響

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