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第三者委員会等報告書まとめ No.5 株式会社ビケンテクノ

第三者委員会

会社・委員会報告書の概要

■1 対象会社
株式会社ビケンテクノ(以下「B社」)

■2 日付
・委員会設置日:2023年12月1日
・報告書提出日:2024年2月14日

■3 市場・会計監査人(監査法人)
・上場市場:東証スタンダード
・会計監査人:EY新日本有限責任監査法人 大阪事務所

■4 委員会・委員・補助者
・「調査委員会」
日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」への準拠なし

・委員
委員長:村中 徹(弁護士)
委員:藤田 大介(公認会計士)
委員:平井 優祐(弁護士・公認会計士)

・補助者
弁護士や公認会計士を含む16名

報告書のサマリ

■1 不正の内容
 B社はマンション管理業務を行っているところ(ただしB社の売上の1%程度であり非主流事業)、B社社員(以下「X氏」)が、マンション管理組合の財産、合計9億1474万4839円を着服していたことが発覚した。手口は、偽造した払戻請求書を利用し、銀行窓口で不正に現金を引き出し、自身で領得していたと推定されている。
 また、顧客であるマンション管理組合への管理委託費用の売掛金が、2023年11月時点で約1億1200万円が滞留しているとされているところ、当該滞留は、X氏が管理組合の預金口座から払い戻しを受けながら、自ら領得したことにより、B社の売掛金が消込みされなかったために発生していたことが判明した。

■2 不正の原因
 不正の原因は、主に管理体制と内部監視の欠如に起因している。マンション管理課においてX氏が長期間にわたり独占的に業務を担当していたことが問題であった。ジョブローテーションが行われず、X氏の業務内容に対する、上席者等の監視や牽制機能が機能していなかったため、不正行為が見過ごされた。
 また、業務手順の明文化がされておらず、各担当者が独自に業務を進める状態が常態化していたことも不正を容易にしたといえる。特に、マンション管理適正化法で義務付けられている「通帳と印鑑の分別管理」が徹底されておらず、X氏が両方を管理していたことが、不正の実行を可能にした要因である。
 さらに、経理部や内部監査部門、監査役など他部門の監視も不十分であり、X氏の不正行為に対する組織的な抑止力が欠如していたことも重大な要因とされる。このような管理不備や内部統制の甘さが、不正行為を長期間にわたって許容する結果となった。

■3 会計処理への影響額
 管理組合に関して合理的に推定される損害額が、約9億1474万円と推定されている。
また、当調査委員会報告書と同日に発表した「特別損失の計上に関するお知らせ」において、
①当該元社員による着服に係る賠償推定額672,008 千円を不正関連損失引当金として計上
②売掛金の回収不能見込額112,542千円を貸倒引当金として計上
した旨の報告がなされている。
 なお、同お知らせにおいて、「本事案の調査委員会等の専門家報酬39,066千円の既発生額」との記載があり、専門家報酬の金額(既発生額のみ)の規模間が分かる。

■4 再発防止策
・マンション管理課における再発防止策
(1)適正化法に基づく業務遂行体制の構築
  適正化法に従い、通帳と印鑑の分別管理を徹底し、内部統制を強化する体制を構築。
(2)マンション管理課の業務手順の策定
  業務フローを文書化し、業務遂行手順を明確化することで不正の発生を防止。
(3)マンション管理業務に関する体制面の改革
  管理組合に対する業務を再編成し、適正な業務分担と監視体制を強化。
(4)人事ローテーションの拡充
  特定の担当者に業務が集中しないよう、定期的な人事異動を実施し、牽制機能を向上。
(5)子会社によるマンション管理業務の承継
  一部の業務を子会社(マンション管理業務を主たる業務としている)に移管。

・管理部門等における再発防止策
(1)経理部
  債権管理の強化や定期的なモニタリングを実施し、未回収債権への対応を迅速化。
(2)監査室
  内部監査機能を強化し、定期的な監査とフォローアップを徹底。
(3)監査役会
  監査役の独立性を保ち、監査役会の監視機能を強化することで経営監視を徹底

■5 その他
 長期にわたりマンション管理課において不正が見過ごされていたため、B社のガバナンスにも問題があるとされた。特に内部通報制度や監査体制の見直しが急務とされている。

その後の経緯

■1 役員の辞任等
2024年2月14日に、代表取締役会長・社長の役員報酬を30%減額(3ヶ月間)、その他取締役・監査役も20%減額(3ヶ月間)、することを決定した。

■2 会計監査人の異動
なし

■3 その他
B社は、2024年3月1日付で、「当社元社員によるマンション管理組合財産着服事案に対する再発防止策に関するお知らせ」を発表し、再発防止策に着手していることを発表した。

資料へのリンク等

■会社IR

専門家による調査委員会の調査報告及び当社の対応に関するお知らせ

特別損失の計上に関するお知らせ

当社元社員によるマンション管理組合財産着服事案に対する再発防止策に関するお知らせ

■日経記事

該当記事なし

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