会社・委員会報告書の概要
■1 対象会社
株式会社ファインシンター(以下「FSC」)
■2 日付
・委員会設置日:2024年5月23日
・報告書提出日:2024年9月28日
■3 市場・会計監査人(監査法人)
・上場市場:東証プライム市場
・会計監査人:PwC Japan有限責任監査法人 名古屋事務所
■4 委員会・委員・補助者
・「特別調査委員会」
日弁連「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」への準拠なし
・委員
委員長:森本大介(弁護士)
委員:佐藤保則(公認会計士)
委員:加藤克彦(FSC独立社外監査役、公認会計士)
委員:鈴木康也(FSC独立社外取締役、公認会計士)
・補助者
西村あさひ法律事務所
デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
報告書のサマリ
■1 不正の内容
FSCの海外連結子会社PT.Fine Sinter Indonesia(FSI)において、2020年3月期から2024年3月期までの期間にわたり、棚卸資産の過大計上が行われていた。過大計上額は2024年3月期時点で約324百万円。FSIの当時の社長による指示のもと、実地の在庫確認が適切に行われていなかったことが原因。
■2 不正の原因
在庫の過大計上は、FSIの前社長b氏によるものである。
b氏は不正を行った理由として、
「すぐには黒字化を達成することはできない状況が続いていた。その中で、当時FSC の代表取締役社長であったl 氏やFSI の担当役員であるf 氏からは、いつになったら黒字化できるのかといった指摘をFSC の経営会議後の報告メール等で度々受け、FSC 経理部からも業績目標達成等を求めるメールが送付されており、プレッシャーを感じていた。」
「財務諸表上で在庫金額を増やせば利益が増え、見かけ上は業績が改善したように見せることができると考え、本件在庫過大計上に及んだ。在庫に着目した理由は、ほかの費目と異なりd 氏にのみ指示をすれば調整が可能であるからであった。」
などと述べている。
ほかにも不正の原因があり、まとめると不正の原因は以下のとおり。
- FSIの黒字化に対する強いプレッシャー。
- FSIの内部統制や監査体制の不備。特に、現地社員が日本人社員へ意見しづらい関係性があった。
- 新型コロナウイルスによる棚卸手続きの緩和。
■3 会計処理への影響額
以下のような修正がなされている。訂正や国内子会社の固定資産の減損処理などにより、これまで最終黒字としていた2022年3月期及び2024年3月期が赤字となった。
2022年3月期:営業利益▲83百万円、総資産▲859百万円
2023年3月期:営業利益▲67百万円、総資産▲961百万円
2024年3月期:営業利益+118百万円、総資産▲1,932百万円
■4 再発防止策
1:海外子会社における牽制機能の強化
(1) 現地スタッフに対する教育及び現地スタッフの登用
(2) 日本人駐在員として赴任する者に対する教育
(3) 多言語化への対応
2:FSC における海外子会社との関係性の見直し
3:FSC における役割と責任の明確化
4:会計ルールの意味についての周知徹底
5:FSC グループにおける組織風土の見直し
6:内部監査の強化
7:内部通報制度の充実
■5 その他
役職員へのアンケートの結果、FSCの山科工場において製造されていたブレーキ等についても、不適切な会計処理が確認された。
いわゆる、件外調査が効果を発揮した事例といえる。
その後の経緯
■1 役員の辞任等
FSCは、2024年9月の調査報告書を受け、代表取締役、取締役(社外取締役を除く)について、月額報酬の自主返上(代取は月額報酬の100%、副社長・専務・常務は月額報酬の50%。いずれも3ヶ月間)が行われた。
また、FSI前社長については退職慰労金の不支給、FSCの前社長については退職慰労金の一部返上の要請が行われた。
■2 会計監査人の異動
なし
■3 その他
FSCは、2024年9月に「再発防止策の策定等に関するお知らせ」を発表し、調査報告書の内容を踏まえた対応に着手していることを公表した。
資料へのリンク等
■会社IR
・特別調査委員会による調査報告書開示に関するお知らせ
・過年度有価証券報告書等の訂正報告書の提出及び 過年度決算短信訂正に関するお知らせ
・再発防止策の策定等に関するお知らせ
■日経記事
・ファインシンター、決算開示延期 子会社の会計問題巡り
・ファインシンター、有報提出を再延期へ 新たに会計問題
・ファインシンター、決算開示を再延期 不適切会計調査で
・ファインシンター、不適切会計の報告書 4期連続赤字に


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