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ENECHANGE株式会社 調査報告書を公表

会計

事案の概要

ENECHANGE株式会社が、2024年6月27日付で、外部調査委員会の調査報告書を公表しました。

↓調査報告書はこちら

ENECHANGE株式会社 IR情報

本件は、ENECHANGE株式会社(以下「ENE社」)が、EV充電事業において活用するSPCを連結の範囲から外していたところ、

あずさ監査法人から、2024年2月19日に、当該SPCを連結の範囲に含めるべきであると指摘されました。

加えて、あずさ監査法人は、連結の要否の検討を取締役会がするにあたっての情報共有が適切になされていなかった点について、内部統制上の問題点があるのではないか、とも指摘しています。

ENE社取締役会は、これらの指摘をうけて、2024年3月27日に外部調査委員会による調査を実施することを決定しました。

なお、この影響で、ENE社は12月決算の会社ですが、本外部調査委員会報告書の公表時点(2024年6月27日)で、いまだ2023年12月期の有価証券報告書を提出していません。

会社の役員体制

調査報告書によれば、2023年12月期の会社の取締役は5名、監査役は3名です。

取締役は、代表取締役CEOの城口氏以外、全員が社外取締役という日本では少し特徴があるといえる構成です。

結果論となってしまいますが、代表取締役以外の取締役が全員社外取締役であったことは、取締役会が社内事情に詳しくない状態を招き、今回の不適切な会計処理が発生する原因となったとも思われます

上述のとおり、あずさ監査法人からも、取締役会への情報共有について問題点があったのではないかとの指摘がありました。

社外取締役による代表取締役等への監督は、適切な情報共有があってはじめて機能するということを、本件は再確認させてくれるものといえるでしょう。

監査役は、常勤が1名、非常勤が2名という一般的な体制です。

会社の会計監査人は、大手監査法人の一角である、あずさ監査法人です。

なお、監査等の報酬は以下のとおりです(2022年12月期有価証券報告書より)

2021年12月期…37,400千円

2022年12月期…36,050千円(うち:2,250千円は2021年12月期の追加報酬)

なお、2023年12月期の監査報酬はまだ開示されていませんが、あずさ監査法人は、今回の件を受けて追加の監査対応を取っていることから上記の2年と比較すると、大幅な増額になるかと思います。

不適切な会計処理発覚の経緯

あずさ監査法人が2023年12月期の通期の監査手続きを実施していた中で、本件会計処理に関する外部通報があった、とのことです。

不適切な会計処理の発覚の経緯は、内部通報、外部通報、監査法人による指摘、等がありますが、今回は外部からの通報でした。

経営者の方や会計責任者の方は、

このご時世、不適切な会計処理はいずれ必ずどこかから情報が洩れてばれる」ということを認識していただければと思います。

昭和の頃の「社員は家族である」といった時代であれば、関与者も秘密を守ってくれたかもしれませんが、今はそんな時代ではありません。

不正に加担したくないので内部通報する、

在籍中はしぶしぶ従うが、退職後通報する、

というケースが一般的な時代です。

経営者の誠実性

今回の調査報告書では、

「本件会計処理に関して、あずさ監査法人に対する説明と出資者に対する説明とを意図的に乖離させたり、そのような乖離を認識しながらあずさ監査法人にそのことを隠蔽したりした事実は認定できず、その点で経営者としての誠実性に欠けるとは評価できない」

と結論づけられてはいます。

もっとも、城口氏は、「(別途、僕らが下取りをする、というのを裏で巻くことをしていいならできますが、ここは監査法人に黙って巻きたい)」等とSlackにおいてやりとりをするなど、

経営者として、財務諸表作成の責任者として、誠実性に欠ける部分があることは明らかと言え、調査報告書もこの点を指摘しています。

当たり前のことですが、経営者の誠実性は、不適切な会計処理を防ぐ最も重要な要素です。

城口氏が、今後このような態度を改めることが期待されるといえるでしょう。

再発防止策の提言

調査委員会は、以下の再発防止策を提言しています。

①コンプライアンス意識の向上

最も大切なことなのですが、言うは易く行うは難しで、組織風土の改善等の地道な作業が必要です。

②権限分散による牽制機能の強化

執行サイドの経営メンバーと社外役員との連携強化を図ることが提案されています。

上記のとおり、やはり社外役員の場合は社内の情報に疎くなるので、その点の改善が望まれます。

③取締役会の監督機能の強化

こちらもやはり社外役員による監督の強化のために、社外役員がアクセスできる情報の強化が提案されています。

④法務コンプライアンス及び会計・経理に係る機能の強化

法務人材の採用、会計リスクの洗い出し、事業部から独立した立場での検討実施ができる体制づくり、が提案されています。

法務、会計の専門家がENE社には不足しているのかもしれません。

私のように、法務・会計のいずれにも詳しい人が、サポートできると,今後の再発防止策も実効性のあるものになるのかもしれませんね。

参考:日経記事

エネチェンジ、株価19%安 会計処理「不正認められず」 あずさは疑義

まとめ

ENECHANGE株式会社の不適切な会計処理について、外部調査委員会の報告書が公表された

社外取締役による監督は、適切な情報共有がなされることが前提

不適切な会計処理は、どこかから情報が洩れて必ずばれる

コンプライアンス意識の向上は、言うは易く行うは難し

法務・会計分野の専門家のサポートが、不適切な会計処理の防止には有用

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