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ENECHANGE株式会社 有価証券報告書を提出

会計

事案の概要・経緯

前回の記事「ENECHANGE株式会社 調査報告書を公表」では、調査報告書について書きました。

EV充電事業において活用するSPCを連結の範囲から外していたという不適切会計が発覚したENECHANGEですが、

2024年7月9日に、ようやく2023年12月期の有価証券報告書が提出(本来であれば2024年3月中に提出)されました。

この有価証券報告書の提出に際して、決算短信で発表した経営成績を、大幅に下方修正しています。

■訂正前

売上6,625百万円、営業利益▲1,066百万円、純資産2,302百万円

■訂正後

売上4,379百万円、営業利益▲2,125百万円、純資産▲1,479百万円

売上が20億円以上マイナス修正した結果、期末日時点で債務超過(純資産がマイナス)という、大幅な修正となりました。

監査報告書の記載内容

監査報告書とは、正式名称を「独立監査人の監査報告書及び内部統制監査報告書」といい、

監査法人が、会社のつくった有価証券報告書について、その適正性を表明するものになります。

KAM(監査上の主要な検討事項)という部分以外は、すべての会社で同じような記載になります。

今回の監査報告書では、このKAMについて、あずさ監査法人がすごい熱量をもって、多くの記述をしています。

特に、外部調査委員会の報告書では意図的な経営者による不正はない、と判断されていた点について、以下のとおり、調査委員会とは異なる見解を述べている点が特徴です

『調査報告書においては、上記の新たに把握された事実について、隠蔽の意図はなかったとする経営者及び執行役員の供述は信用できるとして、これらの事実(当監査法人に説明を行わなかった事実等)は意図的なものではなく、経営者による不正は認められないと結論づけている。

しかし、当監査法人は、このような調査報告書の内容を踏まえてもなお、経営者及び執行役員のslackの内容や電子メールを削除した事実など、存在する多くの証拠に照らして経営者及び執行役員の供述は信憑性を欠くものと判断し、以下の事実のとおり、重要な虚偽表示の原因となる不正が存在したとの認定に至った。なお、この認定に当たり、当監査法人は外部の複数の法律専門家の意見を聴取した。

● 経営者が、筆頭社債権者に対する個人貸付が連結の範囲の判定に影響を与える可能性があることを認識した上で、本貸付の発覚によりSPCの連結が必要となることから当該貸付の存在を隠蔽し、当監査法人がデジタルフォレンジックの実施を通告するまで、取締役会への報告も当監査法人への説明も行わなかったと認められること

● 執行役員が、プット・オプションの行使条件の有無やその行使可能性の程度がSPCの連結の範囲の判定に重要な影響を与えうることを認識した上で、社債権者に対する説明と同様の内容を当監査法人に説明することで、SPCの連結が必要との指摘を受ける可能性が生じることから、社債権者に説明した内容を隠蔽し、当監査法人に対して意図的に異なる内容の説明を行ったと認められること』

つまり、調査委員会の報告書の結論について、あずさ監査法人としては疑問があったため、わざわざ外部の複数の法律専門家の意見を聞いてまで、経営者の不正があると判断・表明しているのです

調査委員会報告書について

調査委員会報告書の内容については、「ENECHANGE株式会社 調査報告書を公表」に記載しております。

監査法人と外部調査委員会の結論が異なった理由は、外部の我々にはよくわかりません。

なお、今回の外部調査委員会は、日弁連のガイドラインに沿った「第三者委員会」ではありませんでしたが、このことが、経営者不正の有無についての判断に影響したかも不明です(基本的には影響しないはず)。

第三者委員会などの報告書については、従前より、

「追及がゆるく、経営者の責任逃れに使われる恐れがある」

「お金を企業からもらっている以上、経営者の責任を厳しく書けないのではないか」

といった批判がなされており、報告書に対して規律が働いていない、という指摘がなされていました。

今回の調査報告書がどう、という話ではありませんので。念のため。

今回、監査法人の監査報告書において、直接的に調査報告書が批判されたわけではありません。

ただ、最も重要な点について、異なる結論を監査法人が表明したということは、今後の委員会の報告書の在り方に、一石を投じたといえるでしょう

参考:日経記事

エネチェンジ、14億円の債務超過に 有価証券報告書提出

まとめ

ENECHANGEは大幅な決算の下方修正を実施して、債務超過となった。

調査委員会の報告書と異なる結論(経営者による不正が存在した)を、監査法人が表明した。

今回のあずさ監査法人の表明は、今後の委員会報告書の在り方に一石を投じたといえる。

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