不動産M&Aの流れと留意点
「不動産M&Aは税制上のメリットが大きいため行われる」の記事で、
値上がり益を含んでいる不動産を保有する会社の経営者にとって、不動産M&Aによる不動産の売却は、通常の不動産売却よりも税制上のメリットが大きいという説明をしました。
今回は、そんなメリットの大きい不動産M&Aについて、売り手側の大まかな流れを説明します。
もちろん、実際の流れは案件ごとに異なりますが、一般的な全体感を把握していただければと思います。
不動産M&Aの流れ① 相談・FA・仲介業者の選定
FA(Financial Advisor)という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
FAとは、M&Aなどのビジネス取引において、依頼者の代理人として、取引全体のコーディネートを行ってくれる存在です。
おそらく、この記事をお読みの皆様も、FAの知り合いなんていないかと思います。
ただ、世の中にはたくさんのFAがいるので、顧問税理士や顧問弁護士、知り合いの不動産業者などに相談すれば、紹介してくれるでしょう。
相続・事業承継絡みの不動産M&Aにおいては、相続税に関する相談をした税理士事務所から、FAを紹介されるケースがあります。
また、ワンストップサービスを提供している税理士法人が、FA業務を行う株式会社を一緒に経営しているケースもあります。
また、FAと似ている存在に、仲介業者があります。
仲介業者は、FAと異なり、取引の仲介、つまり売り手と買い手双方の代理を務めます。
通常の不動産売買において、不動産業者が行っているのと同様です。
仲介業者は、売り手と買い手の双方からお金をもらっているので、中立性・公平性に問題があるとも指摘されています。
ただ、その点は通常の不動産売買の仲介業者と一緒ですので、一概に必ずしも仲介業者はダメだというわけではありません。
なお、正直業者によってピンキリなのですが、一般的にFAへの報酬は、案件金額(不動産M&Aの場合通常株式の譲渡価額)の3%~5%くらいが目安です。
たとえば、案件金額の10億円、報酬4%という案件であれば、4000万円程度かかるイメージです。
案件の金額が高くなれば、報酬比率は下がりますし、案件の金額が低すぎると、最低報酬価額といって、案件金額にかかわらず一定(たとえば500万円以上)となることもあります。
不動産M&Aの流れ② 買い手候補の抽出・選定
FAと契約を締結すると、FAが買い手候補を見つけてきてくれます。
1社しか見つからない場合もありますし、複数社を見つけてきて、入札等によりを行うこともあります。
通常の事業会社のM&Aであれば、金額はもちろん一番大事なのですが、それ以外にも会社経営への理念、M&A後の従業員の処遇、社長同士の相性等、色々な点を考慮して、買い手候補を絞り込みます。
しかし、不動産M&Aの場合は、実質は不動産の売買であり、あまり経営理念等は関係ありません。
通常、購入予定金額を一番高く提示した買い手候補に絞ることになろうかと思います。
不動産M&Aの流れ③ 会社の株主状況の整理等
②に並行して、会社の株主状況などの整理を行う必要があります。
というのも、不動産M&Aの場合、不動産そのものではなく会社(つまり会社の株式)を売却するため、会社の株主状況に問題ないか、等の法的問題をクリアにしておかねばなりません。
ここをクリアにしておかないと、買い手が安心して不動産M&Aに応じてくれないのです。
基本的にはFAが必要なアドバイスをくれることになります。
必要に応じて、顧問弁護士(いなければFA等が紹介してくれます)等に相談しましょう。
会社の事業を継続したい場合には、会社分割等の手続きを行って、不動産を保有する会社と、事業を行う会社に会社を分ける作業を行います。
かなり長くなってきたので、続きは次回の記事「不動産M&Aの流れ 契約・取引」で。
まとめ
不動産M&Aで関与する必須の専門家は、FA(もしくは仲介業者)、税理士、弁護士
仲介業者は利益相反のおそれがあると言われるが、ケースバイケース
FAや仲介業者の報酬は会社の売却額、すなわち不動産の価額に比例するのが一般的
事業を継続する場合は会社分割等を行って、不動産保有の会社と分離する

コメント