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不動産M&Aの流れ 契約・取引

M&A

前回までの流れ

前回の「不動産M&Aの流れ」の記事で、

FAや仲介業者、買い手の選定、売却に向けた会社の整理という事前準備について説明しました。

今回は、実際に取引に入ってからの説明をします。

不動産M&Aの流れ④ 基本合意書の締結

買い手候補を絞り込んだら、基本合意書を締結します。

基本合意書とは、不動産M&Aの具体的な手続きの開始前に、基本的事項を合意するものです。

基本合意書を締結しても、売買しなければならないと合意するわけではありません。

最終的な契約はまた別途締結します。

とは言っても、基本契約はとても重要な契約です。

基本合意者には一般的には法的拘束力を認められない条項が多いです。

もっとも、独占交渉権を買い手に与える条項等は、法的拘束力を認めることが通常です。

独占交渉権とは、一定期間、自分以外の買い手と交渉しないようにしてもらう権利です。

この基本合意書の締結辺りから、弁護士の関与が必須となってきます。

弁護士の費用も、事務所によりピンキリです。

一般的にはタイムチャージ制(稼働1時間あたり3万円~7万円程度)です。

例えば30時間かかるのであれば、90万円~210万円です。

不動産M&Aの流れ⑤ デューデリジェンス(DD)

基本合意書を締結した後、買い手が デューデリジェンス (DD)という手続きを行います。

デューデリジェンス(DD) とは、買収にあたっての必要な調査・手続きという意味です。

DDの内容は多岐にわたりますが、不動産M&Aにおいては、

会社の保有する不動産の状態・収益性の評価を行う不動産デューデリジェンス、

売り手が本当に株式をすべて持っているかなどのチェックを行う法務デューデリジェンス、

税務上問題がないかのチェックを行う税務デューデリジェンス、

等が行われます。

DDにおいては、売り手側が積極的に何かを行うわけではありません。

しかし、資料の提出やヒアリングへの対応等、真摯に対応することで、買い手の信頼をつかむことが肝心です。

不動産M&Aの流れ⑥ 株式譲渡契約書の締結・決済

デューデリジェンスが終了し、買収に問題ないとなれば、いよいよ株式譲渡契約書の締結となります。

株式譲渡契約書には、デューデリジェンスで発見された不備等についての保証や、将来問題が発生したときの定めを合意します。

双方の弁護士が作成・修正等のやりとりをして、最終的な株式譲渡契約書を作り上げて、締結します。

その後、株式譲渡契約書に定めた決済日に、買い手からお金が振りこまれ、会社の株式は買い手のものとなります。

不動産M&Aの流れ⑦ 決済後の手続き等

決済が終了したら、FAや弁護士への報酬の支払いを行います。

なお、「司法書士に頼んで、不動産の所有権移転登記をしなくていいのか」と思うかもしれませんが、不動産M&Aの場合、不動産の所有者は会社のままですので、不動産の所有権移転登記は不要です。

また、株式の売り手は、翌年に確定申告をする必要がありますので、適宜税理士に相談しましょう。

税理士の紹介でFAを選定している場合等は、このときの確定申告の費用等も一緒に税理士と相談してあるはずですので、あまり心配はいらないでしょう。

確定申告の税理士の費用もピンキリです。

もっとも、税理士事務所と一体となっているFAに依頼してある場合、通常追加の税理士報酬は高額にはならないかと思われます。

まとめ

基本合意書の締結には弁護士の関与が必須

基本合意書を締結しただけでは通常売却義務はない

売り手は買い手のDDに協力する必要がある

不動産移転登記の手続きは不要

売り手は確定申告が必要となるので要注意

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