はじめに
今回の記事でも、遺言内容作成報酬費用を、専門家ごとに比較したいと思います。
「遺言を書くには、誰に相談すればいい?」の記事で紹介した専門家、5者について、比較していきましょう。
今回はよくテレビドラマで遺言を預かっているとして出てくる、弁護士へ遺言作成をお願いした場合の報酬相場についてです。
想定事例のケースは、前回同様、以下のとおりの相続財産が7,000万円のケースです。
・相続財産総額は7,000万円
・相続人は妻と、子2人の合計3人
・預貯金2,000万円
・株式・投資信託(時価)2,000万円
・自宅不動産の固定資産税評価額3,0000万円(住宅ローンは完済)
・遺言の形式は公正証書遺言
・遺言の内容はシンプルで定型的
※以下の報酬費用はいずれも消費税を除いた数値で記載しております。
②弁護士の報酬相場の比較
まずは、かつて存在していた「(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準」を見てみましょう。
現在も、多くの事務所がこれを参考に報酬を設定しています。
1:基本手数料(遺言書作成時に発生)…内容に応じて以下のとおり

上記の事例のケースは遺言が定型的なので、10万円~20万円、となります。
2:遺言執行時の報酬(死亡時に発生)…相続財産の額に応じて下記表のとおり

上記の事例のケースで、7,000万円 × 1% + 54万円 = 124万円、となります。
3:事例における報酬合計…134万円~144万円
弁護士に依頼した場合の特徴は、
「事務所によって大きく増減する」
「業務の内容によって費用の増減があり得る」
「遺言内容の作成だけ依頼して遺言執行を依頼せずに費用が節約することも考えられる」
の3点です。
参考に「遺言作成 弁護士」で検索をして、法律事務所を複数調べてみました。
具体例 都内法律事務所その1
1:基本手数料(遺言書作成時に発生)…10万円~15万円
2:遺言執行時の報酬(死亡時に発生)…遺産総額の2%(最低30万円)
3:事例における報酬合計…150万円~155万円
ほとんど上記の(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準どおりであり、多くの法律事務所の報酬がこのレンジです。
信託銀行の210万円と比べると、弁護士に頼んだ方が一般的にはかなり安いことが、お分かりいただけましたでしょうか。
具体例 都内法律事務所その2
1:基本手数料(遺言書作成時に発生)…15万円~
2:遺言執行時の報酬(死亡時に発生)…30万円~
3:事例における報酬合計…幅のある報酬記載のため算定不可
このように「〇〇円~」とだけ記載している法律事務所は結構たくさんあります。
このような表記をする事務所には、報酬が高い事務所も安い事務所もあります。
実際にいくらかかるのかは、直接聞いてみましょう。
具体例 都内法律事務所その3
1:基本手数料(遺言書作成時に発生)…定型:10万円
非定型:(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準と同じ
2:遺言執行時の報酬(死亡時に発生)…遺産総額の3%+30万円
(単純な不動産相続は遺産総額に含めない)
単純な不動産相続は遺産総額に含めない算定となるため、上記の事例のケースだと、4,000万円×3%+30万円= 42万円、となります。
3:事例における報酬合計…52万円
この事務所は、かなり安い方だとといえるでしょう。
どの弁護士に頼むのがいいか
上記の具体例を見てもらえればわかるとおり、どの弁護士に頼むかによって3倍もの差がありますので、十分に検討してから依頼するのがいいでしょう。
どの弁護士に頼むのがいいかは、悩ましいところですが、とにかく費用を節約したいのであれば、
自身の財産状況、作成したい遺言に照らして、費用が安いところを選ぶ
遺言執行は弁護士に頼まず、相続人の誰かができるようにしておく
の2点が肝心です。
また、弁護士1人でやっている事務所にお願いする場合、遺言が効力発生する前(遺言者が亡くなる前)に弁護士が廃業・死亡する可能性があるので、その場合の手続きの進め方に留意する必要があります。
ただ、いずれも素人目線では検討が難しいと思います。
結局は2,3人の弁護士に相談して、自分が安心・納得できる弁護士に依頼するのがいいでしょう。
他の専門家に依頼した場合の費用相場
まとめ
弁護士の遺言作成の報酬は、どの弁護士に頼むかによって大きく異なる
とはいえ、多くの事務所が(旧)日本弁護士連合会弁護士報酬基準に近い報酬水準を採用
財産の金額が報酬に大きく影響する
依頼する業務内容によって、報酬の増減が生じる
遺言執行を必ずしも頼まなければいけないわけではない

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