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会社分割・不動産M&Aを組み合わせた事業承継を考えよう

事業承継

会社分割をした後での不動産M&Aを用いた事業承継

第三者への事業承継(M&A)の売り手側の準備、という記事の②会社経営における法律問題のクリアのところで少し書きましたが、今回は会社分割という手法を用いて、いわゆる不動産M&Aを行うことを考えてみましょう。

会社分割とは、会社法に定められている企業を分割する方法のことで、会社にある資産や事業の一部を、別の会社(新しく作ることも可能)に分ける手法をいいます。

会社分割は、大企業が事業の一部を他の会社と統合する際に、よく用いられる方法ではありますが、中小企業の事業承継の場面でも、よく用いられる方法です。

会社分割という手法を用いると、会社をまるごと譲渡するという以外の事業承継の方法が可能となるのです。

すなわち、既存の取引先との契約や、従業員との雇用契約を再度締結し直す手間が必要ないのが、会社分割という手法を用いるメリットなのです。

会社分割を用いた不動産M&Aを絡めた事業承継

たとえば、昔から都心に所有していた土地の上にビルを建て、その1・2階で小さな商社を営み、3階以上のフロアは他社に賃貸に出している会社を考えてみましょう。

この会社を事業承継する際に価値を計算してみると、保有する都心の土地・建物による価値が10億円、商社事業自体の価値が1億円だったとします。

通常の事業承継であれば、合計11億円の価値のある会社を、親族か従業員に引き継ぐか、M&A売却による第三者承継の手法をとることになりますが、11億円ものお金を用意できる人、会社はなかなかありません。

また、商社事業を承継したいという意向と、都心の不動産が欲しいという意向、その両方を持ち合わせている会社となると、なかなか見つかりません。

そこで、会社分割を用いるのです。

会社分割によって新たな会社を設立して、その新たな会社に商社事業(商社事業に関する契約、資産、従業員など)を移すのです。

これにより、もともとの会社には、都心の土地・建物の所有権と、不動産賃貸契約だけを残すことができます。

その後、もともとの会社が、新たな会社に、ビルの1・2階を賃貸するという定めの賃貸借契約を結ぶことで、商社事業に影響を及ぼさないことが可能です。

会社分割が終わった後、商社事業を1億円で親族や従業員に事業承継します。

もともとの会社については、株式を10憶円で第三者に売却、つまり、所有する不動産ごと会社を売却(これを不動産M&Aと呼びます)します。

ちなみに、不動産だけ(不動産だけを持っている会社)であれば、一般の事業承継よりも買い手が多いため、売却も容易となります。

会社分割を用いた不動産M&Aを用いた方が税制上有利

なお、会社が不動産を売却してキャッシュを作り、そのキャッシュをまるごと配当してしまえば、会社には商社事業の価値(1億円)しか残らないので、これだけ事業承継するいう方法もあります。

しかし、この方法よりも、税制の関係上不動産M&Aを用いた方が通常有利であるため、会社分割をして事業承継をする方法が選ばれるのです(最近活発な不動産M&A① 税制上のメリット参照)。

なお、この点は必ず税理士に相談が必要です。また、会社分割を誤りなく行うためには、会社法の専門家たる弁護士の関与が必須です。

税理士、弁護士双方の協力を得て、失敗のない会社分割・不動産M&Aを用いた事業承継を行いましょう。

実際の不動産M&Aのイメージについては、最近活発な不動産M&A② 不動産M&Aの流れをご参照ください。

まとめ

不動産を所有する会社の事業承継には、会社分割・不動産M&Aを用いると効果的な場合がある

会社の事業だけ、不動産だけ、が欲しいという会社の方が多いので、事業承継がしやすい

会社分割・不動産M&Aを組み合わせた事業承継には、税理士と弁護士の関与が必須

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