本コラムの執筆理由
前回の「弁護士と公認会計士のダブルライセンス」の記事で、近年ダブルライセンスを目指す方が多くなっていることについて書きました。
私自身、弁護士、公認会計士、はたまた司法試験受験生・会計士受験生からも、ダブルライセンスについて相談されたりします。
弁護士・公認会計士のダブルライセンスは百人程度はいると言われています。
もっとも、ほとんど実態の情報が出ていないため、参考までに書いてみようと思った次第です。
弁護士が公認会計士を目指すメリット①
近年、弁護士が公認会計士資格を目指すのが流行っています。
公認会計士予備校のパンフレットの構成を見てもそれが分かるのですが、そもそも目指すメリットはあるのでしょうか?
法律事務は、弁護士の独占業務で、弁護士以外が行うことは法律上禁止されています。
弁護士資格され持っていれば、正直食べていくのに困ることはないでしょう。
また、公認会計士試験も司法試験同様最難関国家資格であり、取得は容易ではありません。
それでも、弁護士が公認会計士を目指すメリットとしては、以下のような点でしょうか。
・企業会計・内部統制等のガバナンスについての専門知識が身に着く
弁護士は法律の専門家です。
司法試験にもその後の弁護士実務においても、会計や内部統制とはあまり縁がありません。
しかしながら、企業経営・ビジネスの現場において、会計知識は必須です。
ビジネスローヤーを目指すのであれば、会計知識は必須といえるでしょう。
実際、大手企業法務の事務所に内定を得た人は、入所までに簿記の勉強をしています。
一般的には、日商簿記2級取得を目指す方が多い印象です。
日商簿記2級を超える会計知識は、ビジネスローヤーとしては、必須とまでは言えないでしょう。
ただ、ビジネスローヤーとして、会計知識はあるに越したことはないでしょう。
弁護士が公認会計士を目指すメリット②
・上記専門知識が身についていることを外部に分かりやすくアピールできる
上述のとおり、会計知識のある弁護士は一定程度存在します。
もっとも、元金融機関勤務とかの経歴がない限り、会計知識があることを対外的にアピールする方法があまりありません。
この点、もっともわかりやすくアピールする方法が、公認会計士とのダブルライセンス、だといえます。
なお、年収については、必ずしも会計士資格取得にかける時間・コストに見合う上昇とはならないでしょう。
そもそも、弁護士は独占業務ですから、独立して上手く事務所経営をすれば、会計士資格などなくても、年収を高めることは難しくはないはずです。
弁護士が公認会計士を目指すデメリット①
光があるところに影があるように、当然デメリットもあります。
・試験勉強に時間・コスト・労力がかかる
公認会計士試験を受験する場合、会計士試験の予備校に通うのが一般的です。
勉強期間は最低でも1年超かかります(一部の天才は1年弱で受かるみたいですが)。
予備校の費用も50万円程度はかかります。
弁護士の仕事で疲れているときに、さらに勉強しなければいけないのは、辛いものがあります。
加えて、公認会計士は難関資格であり、受験勉強に専念している学生相手に試験で勝たなくてはなりません。
このように、合格するか分からないものに、時間・コスト・労力をかけなくてはならないのです。
弁護士が公認会計士を目指すデメリット②
・会計士試験に合格しても、公認会計士登録にはさらに手間がかかる
弁護士から公認会計士を目指すうえで最も悩ましいのが、この点です。
公認会計士登録をするには、公認会計士試験に合格するだけではなく、加えて、以下の3要件を満たす必要があります。
①3年の実務要件(以前は2年でしたが3年に延長されました)
②実務補修所における単位取得
③修了考査の合格
特に、弁護士として働いてきた人の場合、①の要件を満たすのが悩ましいのです。
この点はまた別の記事で説明したいと思います。
まとめ
・弁護士が公認会計士資格取得を目指すメリット・デメリット
会計・ガバナンスの知識が強化される
対外的なアピールになる
年収をあげたいなら、会計士資格を取る必要はない
時間・費用・労力の負担が大きい
会計士試験に合格するだけでは公認会計士登録はできない

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