弁護士が会計士資格取得を目指す
近年、弁護士と会計士のダブルライセンスを目指す方が増えています。
(「弁護士と公認会計士のダブルライセンス」参照)
具体的なメリットは以下の記事を読んでいただければと思います。
(「弁護士が公認会計士とのダブルライセンスを目指すメリット・デメリット」)
先日も、司法修習生が公認会計士試験に合格したという話を聞いたばかりです。
(おめでとうございます!)
今後も弁護士が、公認会計士試験に挑むケースは増えていくでしょう。
今回は、弁護士が公認会計士試験に合格するまでの具体的な戦略を説明しようと思います。
公認会計士試験の概略
公認会計士試験は、以下の2つの試験を突破する必要があります。
(1)短答式試験(12月、5月の年2回)
(2)論文式試験(8月の年1回)
短答式試験は、①財務会計論、②管理会計論、③監査論、④企業法の4科目です。
実は、なんと、司法試験に合格していると、短答式試験は全科目免除となります!
論文式試験は、①会計学(財務会計論&管理会計論)、②監査論、③企業法、④租税法、⑤選択科目、の5科目です。
⑤の選択科目は、経営学、経済学、統計学、民法、のいずれかひとつを選択します。
司法試験に合格していると、論文式試験でも、③企業法と⑤選択科目(民法)が免除となります。
(後述のとおり、免除を使うほうがいいかはまた別の話)
したがって、弁護士が公認会計士試験に合格するには、論文式試験3科目(会計学、監査論、租税法)合格すればいいのです。
弁護士(司法試験合格者)の会計士試験上の免除制度
上述のとおり、司法試験合格者は、短答全科目と、論文2科目が免除されます。
これは、圧倒的に有利な状況にあるといえます。
ちなみに、会計専門職大学院を卒業した方は、短答式試験で①財務会計論、②管理会計論、③監査論が免除されるだけです。
つまり、司法試験合格者は会計士試験において、会計専門職大学院卒業者よりも優遇されているのです。
逆の立場で、
司法試験において、公認会計士試験合格者が法科大学院卒業生以上に優遇されていたら、
と想像すると、いかに司法試験合格者が優遇されているかが、わかるでしょう。
「こんな優遇を生かさない手はない」という考え方が、
昨今のダブルライセンスブームにも影響しているのでしょう。
免除制度を使用すべきか否か
もっとも、論文式試験における企業法については、免除しないで受験した方がいいでしょう。
司法試験を突破した人にとって、会計士試験論文式の企業法はそんなに難しくありません。
論文式試験の合否判定は受験した全科目の平均によって判定されます。
したがって、高得点が望める企業法については、免除を使わずに受験した方が、成績が高くなります。
一方、選択科目(民法)については、免除を使うことをお勧めします。
実は、公認会計士試験において、受験者の8割超は選択科目に経営学を選びます。
(一部の会計士試験予備校では、経営学以外の選択科目の講義が無いほどです)
わざわざ民法を選択する人は、民法に自信のある方のみなので、高得点が望めないのです。
実際に、弁護士で民法を受験した方でも、好成績はとれていないようです。
よって、短答式試験全科目及び論文式選択科目は免除制度を利用しましょう。
論文式企業法については免除制度は利用しない、というのがよいでしょう。
実際の勉強方法とその期間
会計士試験に合格するためには、予備校に通います。
会計士試験では、司法試験と違って独学できる教材がありません。
そのため、予備校通いが必須となります。
現在では、各予備校とも、司法試験合格者コースを用意しています。
費用は、予備校やカリキュラムにもよりますが、50万円程度です。
受講期間は、カリキュラムによりますが、
論文式試験が8月なので、それに合わせた受講期間がいくつか設定されています。
一般的なコースだと、1.5年程度です。
働きながらですと、勉強の時間を取るのが難しく、数年間かかってしまいます。
(恥ずかしながら私も途中でいったんあきらめたりして、4年程かかりました)
もっとも、司法試験合格者は上述のとおり大量の免除があります。
よって、短期合格しようと思えば1年以内での合格も十分可能です。
弁護士登録前の会計士試験合格を目指す
最近多いと感じるのが、弁護士登録する前に公認会計士試験合格を目指すパターンです。
個人的には「司法試験合格までに猛勉強してきたんだから、少しは休めばいいのに」と思います。
ただ、司法試験を目指す方の中にはストイックな方も多いのでしょう。
司法試験合格発表後すぐに会計士試験の予備校に申し込み、翌年の会計士試験合格を目指す猛者がいます。
このような猛者に、2023年からさらなる追い風が吹いています。
2023年の司法試験から、合格発表が11月、司法修習のスタートが翌年3月中旬となりました。
法科大学院生が在学中に司法試験を受験し、卒業後に司法修習に行けるように、との配慮からのスケジュール変更です。
2022年までは、9月に司法試験の合格発表、11月から司法修習スタート、と余裕のないスケジュールでした。
つまり、司法試験の合格発表後、司法修習開始までに約4か月間の空白期間ができました。
この空白期間を使って、公認会計士試験の勉強を一気に進められるようになったのです。
このため、今後、翌年の公認会計士試験に挑む司法試験合格者は増えることでしょう。
まとめ
司法試験合格者は、会計士試験でものすごい優遇されている
短答式試験は全科目免除
論文式試験も最大2科目免除可能
論文式試験の企業法は受験した方がよい
最短で1年以内の合格が望めるが、通常は1.5年程度はかかる
司法修習中に会計士試験に合格する猛者も最近出てきている
司法試験のスケジュール変更は、ダブルライセンスを目指す司法試験合格者に追い風

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