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なぜ相続争いが起きるのかー遺言のない場合ー

相続・遺言

相続争いが起きる要因

遺言を書いていない方が亡くなると、民法の定めによって相続人が誰か決まります。

(「相続人って誰?ー遺言のない場合ー」参照)

同様に、各相続人の相続割合がどの程度なのかも、民法の定めによって、決まります。

(「相続財産の割合ってどう決めるの?ー遺言のない場合ー」参照)

ここまで読んでいただいて、疑問に思いませんか?

「相続人も、受け継ぐ財産の割合も法律で決まっているなら、なぜ相続争いがおきるのか?」と。

相続争いが起きる理由、それは主に、

相続財産の範囲

相続財産の評価

特別受益の有無

の3つの点で揉めるからです。

相続財産の範囲

民法896条で、相続財産の範囲が以下のように定められています。

「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。

ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

分かりやすく言えば、亡くなった方の財産のほとんどすべてが相続財産の範囲です。

では、どういうときに相続争いになるのかというと、

「ある財産が、亡くなった方の財産なのかほかの人の財産なのか分からない場合」です。

たとえば、長男と暮らしていた方の自宅に金の延べ棒があった場合を考えてみましょう。

金の延べ棒が亡くなった方のものであれば相続財産の範囲に含まれます。

一方、金の延べ棒が長男のものであれば、当然相続財産の範囲には含まれません。

他に揉めるケースとしては、預金の変動がよくあります。

たとえば死亡の数か月前に銀行口座から長男の妻へ300万円が振り込まれている等のケースです。

この300万円(ないしは300万円の返還請求権)が相続財産の範囲に含まれるか、ということが問題になります。

相続財産の評価

ちなみに、相続財産の範囲については問題とならないケースも多いです。

一方、相続財産の評価は、問題になるケースが多いです。

たとえば、自宅の土地建物と銀行預金3000万円が相続財産で、相続人が長男と次男の2人のケースを考えてみましょう。

自宅は被相続人と同居していた長男が今も住んでおり、長男が引き継ぐこととします。

そのうえで、預金を2人で分けることとしました。

自宅が2000万円の評価の場合、長男と次男はそれぞれの相続分が2分の1ですから、長男は自宅と預金500万円を相続し、次男が2500万円を相続することになります。

一方、自宅が3000万円の評価の場合、長男は自宅のみを相続し、預金3000万円はすべて次男が相続することになります。

つまり、預貯金以外の財産(たいていは自宅等の不動産)が相続財産にある場合、それをいくらと評価することによって、その余の財産の分け方に影響してくるということです。

もちろん、被相続人の自宅にもう誰も住んでいない場合などには、これを売却して、均等に分けるということも可能です。

ただ、実際には、被相続人が居住していた自宅に、引き続き誰かが住むケースが大半です。

その場合売却できず、評価額がいくらかなのか、争いの種となるわけです。

実務上、不動産をいくらと評価するかは、双方の当事者が不動産業者に簡易査定(基本無料)をしてもらい、その中間の金額で決めることが一般的です。調停等の裁判手続きに入っている場合には、裁判所が選任する専門家に鑑定(有料。結構高い)してもらうこともあります。

特別受益

最後に問題となるのが、特別受益という制度です。

生前に相続人が受けた利益について、相続人がもらう分から差し引く、という制度です。

しかし、大変複雑であるため、こちらの記事を参照ください。

相続争いの原因たる特別受益ー遺言のない場合ー

まとめ

相続争いが起きる原因は主に3つ(相続財産の範囲、相続財産の評価、特別受益の有無)

財産が、亡くなった方の財産なのか、ほかの人の財産なのかが問題となる

自宅等の売却できない不動産がある場合、それをいくらと評価するかで問題となる

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