遺言のない場合、かつ、相続人全員で合意できない場合
遺言がない場合、相続財産の相続割合(相続分)は、相続人全員の合意により決定します。
(「相続する財産の割合の決め方 ー遺言のない場合ー」参照)
話合いでの合意ができない場合、家庭裁判所で遺産分割の手続きを行います。
(※相続人が裁判所行かなくていいよう、生前に遺言を書きましょう!)
家庭裁判所での手続きの概要
家庭裁判所での遺産分割の手続きは、大きく2段階に分かれます。
第1段階 調停
第2段階 審判
事前の合意形成の話し合いの段階で弁護士を選任していることが一般的です。
もっとも、家庭裁判所に申し立てをするタイミングで、弁護士に相談される方もいます。
なお、調停の申し立てをする際、弁護士をつけることは必須ではありません。
ただ、裁判所の手続き、裁判所での話し合いは、専門技術的な側面が多いです。
弁護士の専門分野ですので、弁護士に任せましょう。
家庭裁判所での遺産分割調停
家庭裁判所で手続きをする場合には、遺産分割調停を申し立てることになります。
調停とは、裁判所が間に入った話し合いのことです。
調停は、訴訟のように双方の主張を書面で戦わせるものではありません。
裁判所という第三者が間に入って合意形成を目指すものです。
遺産分割調停も、当事者同士の話合いも、同じ相続人の合意形成目指すものです。
しかし、以下の2点で大きな違いがあります。
①裁判所という中立的な第三者が間に入るため、利害調整・合意形成がしやすくなる。
②調停で合意が成立すれば、裁判所が合意文書を作成するため、紛争の蒸し返しリスクがなくなる。
家庭裁判所での遺産分割調停のメリット
「なあんだ、調停って、ただ裁判所が関与するだけか。結局お互いが合意しなきゃならないんじゃ、意味ないじゃん」
と思った方も多いのではないでしょうか?
しかし、弁護士としての経験から言うと、この①の効力はとても大きいです。
実は、相続人双方に弁護士がついて話合いをすると、お互いプロなので「この辺が落としどころかなあ」という状況になります。
このとき、弁護士が依頼者に対して譲歩を提案した場合があります。
すると、「先生はどっちの味方なんですか!」とご納得いただけないケースがたまにあります。
一方、家庭裁判所の調停手続きであれば、同様のことを中立の裁判所から言われます。
したがって、依頼者も納得して、受け入れやすくなることが往々にしてあります。
当事者同士、もしくは弁護士同士での話し合いで合意ができなかったケースでも、家庭裁判所の調停手続きの段階で合意ができるというケースは多いのです。
家庭裁判所での遺産分割審判
それでもどうしてもお互いの合意が成立しない場合には、調停が不成立となります。
そして、第2段階の遺産分割の審判手続きに移行します。
審判手続きにおいては、家庭裁判所が決定を出して、強制的に遺産分割が行われます。
家庭裁判所が審判で各相続人の相続分を決定する際に、基準とするものがあります。
それが、法定相続分というものです。
法定相続分
法定相続分は、民法900条に、以下のように定めてあります。
①配偶者と子が相続人であるとき 相続分は配偶者が2分の1,子が2分の1
②配偶者と直系尊属(父母等のこと)が相続人であるとき 相続分は配偶者が3分の2,直系尊属が3分の1
③配偶者と兄弟姉妹が相続人であるとき 相続分は配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1
④子、直系尊属、兄弟姉妹が複数人いるときは、上記①から③の相続分をさらに等分する。
(半血兄弟姉妹の場合の例外規定あり)
理屈上は、この法定相続分に縛られるのは、家庭裁判所が行う審判手続きのみです。
しかし、最終的な手続きである審判で法定相続分により遺産分割がなされることから、
当事者同士もしくは弁護士同士の話し合いや調停手続きにおいても、この法定相続分を基準に話し合いが行われるのです。
まとめ
家庭裁判所での遺産分割の手続きは、①調停、②審判、の2段階
調停とは、裁判所が間に入った話し合いのこと
結構な割合で、調停で話がまとまる
調停で合意できなければ、審判で強制的に遺産分割される
法定相続分は、当事者の話し合い、調停、審判、どの段階でも参考・基準にされる

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