事業承継の対策
事業承継には3パターンあることは、『事業承継対策をはじめよう』の記事で説明しました。
そのうち、最も多い親族内承継において、揉めてしまケースを「事業承継 親族内承継」で説明しました。
経営者が持っている財産の大半が会社の株式である、というケースはよくあります。
この場合、会社を承継しなかった子どもに対して、承継させる財産がほとんどないことになります。
会社を承継しないことに納得はしていたとしても、ほとんど財産がもらえないとなると、不満が出るのも当然です。
今回は、このような不満が出て親族間で揉めることを防ぐ対策について、説明します。
この場合の紛争対策としては、会社株式の評価額を下げることに尽きる、と言えます。
これは何も、会社を滅茶苦茶にして業績を悪化させろ、という話ではありません(笑)
会社名義になっている資産について、経営者個人のものに変えていく、という意味です。
会社株式の評価額を下げる対策 その1 役員報酬・退職金
最も一般的に行われていることは、経営者に退職金を支払い、会社が保有する現預金の金額を少なくすることです。
当たり前ですが、会社が保有する現預金の金額を少なくすれば、会社株式の評価額は下がります。
即時の経家医者交代までは考えておらず、経営者の退職までに時間があるケースもあるでしょう。
その場合、毎月の役員報酬を引き上げる、という手段が考えられます。
もっともこれらの対策は、キャッシュアウトを伴うため、経営の資金繰りに苦慮している企業では、使いづらいというデメリットもあります。
ちなみに、会社に遊休資産(事業上で使用していない資産)がありませんか?
その場合、遊休資産を処分してキャッシュを生み出すことが考えられます。
会社株式の評価額を下げる対策 その2 会社分割・不動産の処分
会社が不動産を所有している場合、売却してキャッシュを生み出すことが考えられます。
また、近年よく行われているのが、会社分割と不動産M&Aを組み合わせる手法です。
なお、不動産M&Aについては、下記2つの記事をご参照ください。
つまり、会社を、不動産を保有する会社と、現状の事業を行う会社の2つに分割する、のです。
そのうえで、不動産を保有する会社を売却します。
または、不動産を保有する会社の株式を売却せずに、会社の後継者とは別の相続人に承継させるという手法もあります。
この点、この不動産が自社ビルのように、事業に用いている不動産の場合は、
①賃貸借契約を締結して事業会社が賃料を支払って利用を続ける
②新しい建物を借りて、この不動産から出ていく
の2パターンがあります。
どちらが良いかは、ケースbyケースです。
不動産の用途(事務所か工場か)や親族の関係性によるでしょう。
会社株式の価値を下げる対策の注意点
注意すべきことは、会社株式の評価額には、
①税法(特に相続税法)上の評価額
②民法(つまり遺産分割)上の評価額
の2つがあり、両者が完全に一致するわけではない、ということです。
支払う贈与税・相続税を下げるためには、①の評価額下げる必要がありますが、
遺産相続争いを防ぐためには、②の評価額を下げる必要があります。
②の評価額を算定する際は、会計に詳しい公認会計士が評価することが一般的です。
このように、税務・法律・会計の三分野にまたがる知識が必要となるのです。
一部の専門知識しかない場合、以下のようなトラブルが発生し得ます。
・①しか気にしていなかったため、相続の段階で親族間の紛争が発生してしまう。
・会計に詳しくない専門家が、①と②の違いを意識せず、実態とかけ離れた評価額を算定してしまう。
・②しか見ていないために多額の税負担が発生してしまう。
このような紛争を防ぐためには、
複数の専門家に相談するか、三分野に詳しい専門家に相談することが望ましいでしょう。
まとめ
親族内承継の争いに有効なのは、株式評価額を下げること
役員退職金の支払いをしよう
会社保有の不動産を、不動産M&Aで売却しよう
株式評価額には、税務上の評価と民法上の評価の二種類がある
税務、民法、双方の専門家 or 双方に詳しい専門家に依頼しよう

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