遺言作成の流れ
これまで、「遺言を書こう」「遺言を書くには、誰に相談すればいい?」という記事で、遺言の一般論について説明してきました。
今回は、具体的にどのような流れになるのか、簡単に説明していきます。
最も一般的な、「作成するのは公正証書遺言、相談は弁護士に」というケースで説明します。
①遺言内容を考える
まずは、どういった遺言を残したいのか、考えてみましょう。
全て財産を配偶者に残すのか、全相続人間で等分するのか。
孫などの相続人以外の親族や、親族以外のお世話になった人にも残すのか。
このように、遺言とはその人の人生感の表現であり、遺言は、人の数だけ内容があす。
内容によっては、法律上遺無効であったり、遺留分を侵害している、等の問題がありえます。
ただ、まずは、あなたの心の赴くままに、理想の財産の残し方を考えてみましょう。
②遺言作成の相談・依頼
遺言作成のサポートをしてほしい弁護士の事務所に、電話やホームページから予約をします。
大半の弁護士まずは相談だけ、といったことも可能です(有料相談、無料相談のところがあります)。
どこまでお願いした場合に、どの程度費用がかかるのか等も、しっかり聞いてみましょう。
相談の前には、自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらにしようか迷っていることも一般的です。
相談において、どちらがよいか、弁護士からアドバイスをもらうことができます。
「この弁護士にお願いしよう」と決心したら、弁護士と委任契約を締結し、正式に遺言作成がスタートします。
③法的アドバイスをもらう 注意点その1
遺言についての法的な注意点は主に2つあります。
1つ目の注意点が,法律上,遺言では達成することができない内容がある点です。
有名な例としては,いわゆる跡継ぎ遺贈ができないことです。
跡継ぎ遺贈とは,「実家の土地建物を,まずは妻に,その後妻が死んだら甥に相続させる。」といった,相続させたものをさらにに他の人に相続させようとする遺贈のことをいいます。
たとえば子供のいない夫婦において,現在住んでいる先祖代々の土地には、自分の死後は妻に住んでほしい。
ただ、妻の死後は,妻の相続人たる妻の兄弟ではなく、自身の実家の跡継ぎたる甥に相続させたい,というケースです。
しかしながら,民法上このような遺言は許されていません。
遺言でできることは,あくまで妻に残すと決めるところまでなのです。
妻の死後どうなるかは,その妻の遺言もしくは相続で決まってしまうことになります。
このように,法律上、そもそも達成できない遺言があります。
単純に財産を分ける、以外の遺言をお考えの方は,必ず弁護士に相談しましょう。
なお,跡継ぎ遺贈は,遺言でやるのは無理ですが、信託という制度を使えば目的は達成可能です。
後継ぎ遺贈をやりたい方は,弁護士に相談してみましょう。
④法的アドバイスをもらう 注意点その2
2つ目の注意点が遺留分です。
遺留分についてはテレビドラマ等で聞いたことがある方が多いかもしれません。
兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者,血族相続人)に認められた,最低限の相続財産をもらう権利です。
勘違いが多いのが,「遺留分を侵害する遺言は無効である。」というものです。
実際には,遺留分を侵害する遺言は自動的に無効になるわけではありません。
遺留分の権利者が,「財産をよこせ」と財産をもらった方に対して権利行使をして初めて,遺留分を侵害した金銭相当分の支払い義務が生じるのです。
したがって,遺留分を侵害する遺言を作成することは禁じられていません。
ただ,侵害するのか,するとしてどの程度か,個々人ごとに事情が異なるので,よく弁護士と相談して決めることをお勧めします。
⑤遺言の文章を書く
弁護士に相談する場合,もっとも多いケースが公正証書遺言になるかと思うので,公正証書遺言のケースについて,以下流れを説明します。
これまでの相談内容を聞き取ったうえで,弁護士の方で文案を作成します。
遺言者の方との協議の上,適宜修正をしたうえで,弁護士が,公証人役場へ連絡をとり,公証役場に実際に行く日時や,文案の詰めのやりとりを行います。
指定された日時に,証人2人を連れて,公証役場へ行き,遺言を口授(内容を口頭で公証人につたえること)をします。
証人はご自身で用意できない場合は,法律事務所側で用意することもできますので,知り合いに遺言内容を知られたくないという方は,気軽に証人の用意を弁護士に依頼しましょう。
遺言の作成は数十分程度で終わることが一般的です。
遺言の原本は公証役場に保管されますので,遺言者がなくなった後に,紛失してしまった場合でも,安心して内容を把握することができます。
ただ,注意点としては,遺言があること自体が相続人の誰もが知らない場合,スルーされて遺産分割されるおそれがあります。
遺言の内容はともかく,遺言を作成したこと自体は相続人の方に話しておきましょう。
まとめ
・弁護士と相談して遺言内容を決めよう
・法律上,達成できない遺言内容がある
・公正証書遺言の場合,証人が2人必要だが,法律事務所側で手配も可能
・遺言を作成したこと自体は相続人に伝えておく


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