遺言とは
遺言とは、①法律上有効な、②財産の承継方法を記載するものです。
(記事「遺言を書こう」参照)
今後亡くなる方(=この世のすべての方)が、自分の死後に備えておくべきものです。
①に関連して、遺言は一部法律上達成することができないことがあります。
いわゆる後継ぎ遺贈が、その代表例です。
(記事「遺言を書こう② 具体的な遺言作成の流れ」参照)
後継ぎ遺贈とは、自分の死後はAが、Aの死後はBが相続する、という内容の遺贈です。
他にも、毎年〇万円ずつ相続させる、という遺言も、作成することができません。
小さい子に一度に財産すべてを相続させると、不必要に使ってしまうかもしれません。
また、悪い大人が寄ってきてしまうというのを防ぐことも難しいです。
ペットがいる独居の方は、死後、ペットの世話のためのお金を残したいのではしょうか。
しかし、ペットには相続権がないため、その費用を遺言によって残すことは難しいです。
もちろん、知人と口約束しておくことは可能ですが、確実とは言えません。
このように、遺言によってはできないことを、達成するのために用いるのが、信託です。
信託とは
信託とは、その名の通り「信じて財産を託す」行為です。
信じる相手によって、「民事信託」と「商事信託」の2種類に分かれます。
「商事信託」とは、金融庁から免許を与えられた信託銀行・信託会社への信託です。
すなわち、管理がしっかりしている会社を信じて、財産を託します。
したがって、費用もある程度かかってしまいます。
一方、「民事信託」とは、一般の方へ依頼する信託です。
なお、「家族信託」という用語を用いている専門家の方がいます。
これは家族に対して「民事信託」を行う、という意味
よって、「民事信託」と同義と理解してもらって問題ないかと存じます。
信託の対象となる財産
信託の対象となる財産は、金銭に限られません。
不動産、会社の株式等、多種多用な財産が可能です。
また、信託財産から財産を引き出す方法も多様なやり方が可能です。
たとえば、
不動産の家賃収入から経費を引いた利益分を毎年子にあげる、という信託も可能です。
株式の議決権行使権限はAさんに、配当金受領権限はBさんに、という信託も可能です。
このように信託は多様な財産の分け方が可能です。
この点が、信託は遺言よりも融通が利くというメリットだと言われています。
さらに、信託は元の所有者の生きている間から、設定・効果の発生が可能です。
ただし、生前に効果を発生させる場合、贈与税がかかる恐れがあります。
税理士へ相談は必須といえるでしょう。
ちなみに、死後に効果を発生させる場合には、贈与税ではなく相続税が問題になりえます。
信託設定の注意点
このように、信託はとても柔軟性があって便利な制度ですが、
信託される相手がそもそも信用できる相手でなくてはいけないこと(商事信託なら安全)、
信託の設定方法が複雑なこと、
法的・税務的問題が発生し得ること、
等の注意点があります。
したがって、信託を設定するには、必ず弁護士等の専門家へ相談しでしょう。
この点、ある程度調べればご自身で作成できる場合がある遺言とは、大きく異なります。
まとめ
遺言では達成できない内容も信託なら達成できる
信託には,「民事信託」と「商事信託」に二種類がある
対象となる財産、引き出し方法は多種多用
信託の設定には弁護士等の専門家への相談が必要


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