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【シリーズ最終回】監督と監査、その役割の違いとは?理想の社外役員像に迫る

社外役員

はじめに

こんにちは。「社外役員」をテーマに6回にわたってお届けしてきたシリーズも、いよいよ今回が最終回です。

これまで、なぜ社外役員が必要なのかという原点から、コーポレートガバナンス改革の潮流、CGコードの指針、ESGとの関連、そして「独立役員」の定義まで、多角的に見てきました。

総仕上げとなる今回は、より実践的な視点から、「社外取締役」と「社外監査役」の具体的な役割の違い、そして企業が真に求めるべき「理想の社外役員像」とは何かについて、これまでの内容を総括しながら解説していきます。

社外取締役の役割 ― 経営の「監督」と「後押し」

社外取締役の最も重要な役割は、一言でいえば「経営の監督」です。

しかし、それは単に経営陣の粗探しをすることではありません。

会社の持続的な成長中長期的な企業価値の向上という共通の目標に向かって、経営を適切に監督し、時には力強く後押しする役割を担います。

CGコードでは、独立社外取締役に期待される役割・責務として、特に以下の4点を挙げています

  • ① 経営方針への助言: 自らの知見に基づき、会社の持続的成長の観点から助言を行うこと 。
  • ② 経営の監督: 経営陣幹部の選解任などを通じて、経営を監督すること 。
  • ③ 利益相反の監督: 会社と経営陣や支配株主との間の利益相反を監督すること 。
  • ④ ステークホルダーの意見の反映: 経営陣から独立した立場で、少数株主をはじめとするステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること 。

経済産業省が策定した「社外取締役の在り方に関する実務指針」でも、社外取締役の監督には、不祥事を防ぐ「守り」の意味だけでなく、企業の成長を実現するための「攻め」の意味での監督も含まれるとされています 。

経営陣が適切なリスクテイクを行えるよう、その意思決定プロセスを支え、サポートすることも重要な役割なのです 。

究極的には、社外取締役の監督の中核は、「現在の経営陣に会社の経営を任せることが、企業価値向上の観点から適切かどうかを判断すること」にあるといえるでしょう 。

社外監査役の役割 ― 独立性と専門性に基づく「監査」

一方、社外監査役の役割のキーワードは「監査」です。

取締役の職務執行が法令や定款に違反していないかをチェックする「適法性監査」が中心となります 。

社外取締役の「監督」とは、主に以下の点で異なります。

  • 独立性の強さ: 監査役は、取締役会での議決権を持ちません。その分、業務執行の意思決定から完全に独立した、より強固な客観性を保つことが可能です。
  • 強力な調査権限: 会社法に基づき、いつでも取締役や従業員に報告を求め、会社の業務や財産の状況を調査できる強力な権限を持っています。社内の情報に精通した常勤監査役と連携することで、その実効性を高めることができます 。
  • 監査の重点領域: 主な役割は、業務執行の「適法性監査」と、決算書などが正しく作られているかを見る「会計監査」です。いわば「守りのガバナンス」の要といえます。
  • 求められる専門性: 監査の性質上、必然的に財務・会計・法務などの専門的な知識が求められる場面が多くなります。

このように社外監査役には、強固な独立性専門性を武器に、会社の業務執行と会計報告の適法性を確保し、企業の健全性を足元から支えることが求められているのです。

専門性に関して言えば、CGコード原則4-11では、

監査役には、適切な経験・能力及び必要な財務・会計・法務に関する知識を有する者が選任されるべきであり、特に、財務・会計に関する十分な知見を有している者が1名以上選任されるべきである。

とされており、専門性、特に財務・会計に関する専門性が強く求められています。

この点、公認会計士は、財務・会計の専門家であるため、多くの企業において、社外監査役に公認会計士が選任されている、というわけです。

また同様に、法務に関する知識を有する者として、弁護士が社外監査役に選任されることも一般的です。

忘れてはならない「有事」における役割

平時の監督・監査に加え、社外役員は「有事」の際にも極めて重要な役割を果たします。

企業不祥事が発生した場合や、M&Aなどの利益相反が生じうる場面で設置される第三者委員会や独立委員会の構成員として、独立した立場から事実解明や再発防止策の提言を行うことが期待されます 。

また、CGコードでは、従業員などが安心して不正を報告できる内部通報制度の窓口として、社外取締役や監査役が機能することを求めています。

これも、経営陣からの独立性が信頼されているからこそ担える重要な役割です。

理想の社外役員像とは?

それでは、このシリーズの締めくくりとして、企業が目指すべき「理想の社外役員像」を5つのポイントにまとめてみましょう。

  1. 揺るぎない独立性: 経営陣との馴れ合いや社内の雰囲気に流されず、自らの良心と信念に従って公正不偏の態度を貫く精神的な強さ 。
  2. 多様な視点と高い倫理観: 社内の常識にとらわれず、外部の論理や社会的な責任、中長期的な視点を取締役会に持ち込めること 。
  3. 経営への理解と質問力: 会社の事業や市場環境を深く理解し、本質的な課題を見抜いて適切な問いを発することができる能力 。
  4. 優れたコミュニケーション能力: 経営陣と適度な緊張感を保ちつつ信頼関係を築き、他の役員や従業員、会計監査人などと円滑に連携できること 。
  5. 学び続ける姿勢と柔軟性: 会社の状況や外部環境の変化に対応し、自らが果たすべき役割は何かを常に考え、行動できること

まとめ

全6回にわたり、社外役員の世界を巡る旅にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。

社外役員は、もはや一部の大企業だけのものではなく、企業の透明性・公正性を高め、持続的な成長を実現するための不可欠なパートナーと言えるでしょう。

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